2017年4月30日開催 応用編セミナーの質疑応答

  《消化吸収、ピロリ菌に関する質問》
Q-1 胃での消化不足は、胃内の食物の腐敗を生じ、それが腸内に問題を起こし、その結果、
アレルギーを起こす可能性があるとの意見を聞いたことがあります。本当でしょうか?
A.腐敗というのは、そこに異常な細菌増殖を伴うものですが、胃での消化不足では、あらゆる菌が不消化の栄養素を元に増殖することになります。特に真菌からはトキシンが、またガス産生菌からはメタン、水素が発生します。それらが腸内でのトラブルを引き起こします。小腸トラブルでリーキーガットを起こすと遅延型フードアレルギーを起こしやすくなります。(川井)
A.胃内で腐敗というよりは、消化不良ならタンパクの分解が不十分で大きいペプチドが腸管を通過して、食物アレルギーの一因となることは考えられます。(森永)
Q-2 ピロリ菌が常在菌なら、上手く共生させるため、口腔・胃・腸の環境を整える事で
除菌せずに済みますか?
A.正直、議論のあるところですが、上手くいくなら除菌なしで済みます。しかし症状を起こした場合、強毒株のピロリ菌である可能性が高く、注意が必要です。(川井)

 

Q-3 米飯を摂取する場合、よく咬んで咀嚼して消化酵素がしっかり働いた場合に吸収される栄養素と、予め熱を加えてお粥状にしたものを摂取して吸収される栄養素に、大きな違いはあるのでしょうか?
同様に、高齢者施設などでは、摂食障害の疑いで食形態を刻んだり、とろみを付与したり、
ペースト状にしたり、様々あると思いますが、吸収される栄養素はむしろ減少されるのでは(常食を咬んで食べるのに比して)と感じました。
その認識で間違いがなければ、経管栄養療法を受けている人は、脳相(胃相)でのプロセスが省略され、結局は栄養不良の状態から抜け出せないでしょうか?
A.でんぷん質はアミラーゼが働かないと十分吸収できる低分子になりません。噛む回数が多く、唾液分泌が多い方が有利となります。また、様々な加工をすればするほど、その食材に含まれる微量栄養素は失われていきます。経管栄養では、アミノ酸など最終消化産物の混合になっていることが多いので、ある程度は吸収効率が良くなっています。しかし、腸内環境がそもそも整っていないと、吸収上皮は萎縮し、吸収は低下することになります。(川井)
Q-4 タケキャブで胃酸分泌を止め、一気に環境を変えてピロリ菌が減る質問には「増える」と記載されている)というのは、とても面白いです。この際、サプリメントの種類や量は以前の方法と違いがありますか?
A.除菌に際し、ということで言えば、以前の方法と同様です。(川井)
Q-5 インプラント周囲炎とピロリ菌との関連について何か知見があれば教えて頂きたい。
Pコントロールが出来ていても、元々リスクが高かった患者においてはインプラント埋入はあまり推奨出来ないのでしょうか?
A.インプラント部位の細菌叢からH.Pyloriが検出され、その量はインプラント周囲炎の方が多かったという文献があります。ただしインプラント周囲炎への病原性は確認できないようです。天然歯と同じように「リザーバー」としての関与はあるということになります。要約が下記から読めますのでご参照ください。http://onlinelibrary.wiley.com/wol1/doi/10.1111/cid.12052/abstract
Pのリスクとインプラントの推奨に関しては、ここでは何とも言えません。(森永)
Q-6 L.ロイテリ菌はラクトバシルスとして除菌後に有効ですか?
ラクトフェリン(バイオラクト)と同じように有効ですか?
A.通常の抗生剤での除菌後にはあらゆる常在菌の変化が起こります。データが示されているわけではありませんが、口腔内にはLロイテリ菌が有効と考えます。バイオラクトも有効です。(川井)
A.ロイテリ菌がピロリの除菌率を向上させたり、副作用を軽減するという文献は散見されます。その一つが下記よりフリーでアクセスできますのでご活用ください。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3368352/
腸内環境を改善するという意味ではロイテリもラクトフェリンも同じですが、プレバイオティクスとプロバイオティクスの違いは押さえておくべきと思います。(森永)
Q-7 何故、逆流性食道炎にグルタミン・ラクトフェリンの内服が良いのでしょうか?
A.逆流性食道炎と診断されているものの中に、SIBOなど小腸細菌の異常なガス産生があると、それによって腹圧上昇が起こり、食道に胃内容が逆流します。グルタミン・ラクトフェリン投与によってSIBOは改善され、結果逆流症状が改善されます。(川井)
A.グルタミンは小腸粘膜上皮の最大のエネルギー源であり、免疫にも深くかかわることはスライドでお示ししましたが、食道から腸に至る消化器系臓器の粘膜の新陳代謝にも重要な栄養素です。グルタミンは胃腸の機能の改善を助け、免疫を強くし胃粘膜のダメージを防いでくれます。
ラクトフェリンの低濃度・持続摂取は、TNF-αの産生を抑制し抗炎症作用を示すこともスライドでお示しました。(森永 )
Q-8 口腔内ピロリ菌は除菌出来るのでしょうか?
A.スライドで、歯周治療を行うことで、ピロリの口腔内保有率は減少するというデータをお示ししました。それが再感染率を下げた要因と思います。完全な除菌ができるかは不明ですが、私たちがするべきは歯周治療ということだと思います。(森永)
Q-9 口腔内イースト内にピロリが存在するとの事ですが、イースト内部は酸性に偏った環境なのでしょうか?胃内に好んで生存していることから強酸性の環境がイースト内にあるのか?
と思いました。
A.ピロリ菌は胃内では通常は桿状菌の形をしていて、その端に4~7本の鞭毛を持っています。これが活動型ですが、周囲の環境が不利な条件になると、コッコイドという球状の休眠型に変化することが知られています。イースト内部では恐らくコッコイドとなっていると思われ、スライドでお示しした光学顕微鏡画像でもピロリと思われるBL-B(細菌様物体)は粒状の形態ですので矛盾しないと思われます。
Q-10 歯科でウレアーゼ試験を行うことは可能ですか?検査キット等の入手は出来ますか?
A.口腔内プラークに対して迅速ウレアーゼ法を実施している文献はいくつかありますが、いずれも海外のものです。国内で可能かどうかは不明です。(森永)
Q-11 歯周病の治療において(抜歯も含め)抗菌剤の使用するケースが多いと思っています。
ピロリ菌の感染を疑って紹介状を出し、実際にピロリ菌除菌が始まった場合はトータルで患者さんが服用する抗生剤の量が多く、期間も長いように感じます。歯周治療・インプラント治療・抜歯に加えてピロリ菌除菌となった際、抗生剤の服用量を減らす食事のアドバイス、サプリメントの摂取などありましたらお教え下さい。
A.まず、抜歯に関しては、全身や口腔内の状況が許せば講演スライドやA22のようにサプリメントで代用できると思います。インプラント治療などで静脈路を確保している場合は高容量のビタミンC投与など、さらに選択肢が広がると思います。
食事については酸化ストレスを減らすために血糖値の乱高下が起きない糖質の摂り方、抗酸化物質の豊富な食材などでしょう。
私も気になっていたのですが、歯周治療が先か、ピロリ除菌が先かという問題を明確に示している文献は見つかりませんでした。一法として、一次除菌が終了してから口腔内細菌のPCR検査を行い、歯周治療での抗菌剤の使用の有無を決めるというのもありかと思います。(森永)
Q-12 30代の男性患者。歯周初期治療を行っても改善が認められず、問診をしてみると逆流性食道炎でPPIを処方されているということでした。質的な栄養不足を疑っていたので胃酸の分泌不足が大きく関与していると思われますが、PPI、H2ブロッカーなどの処方によって難治性の歯周炎が生じているという可能性についてどうお考えでしょうか?
A.歯周病の治癒を妨げている要因の一つとして制酸剤による胃酸不足は考えられると思います。ただ、生活習慣を含めて栄養面から総合的に考える必要があると思いますので「この薬を止めれば歯周病がよくなる」というような説明はリスクがあるかも知れません。(森永)
   
  《栄養療法全般に関する質問》
Q-13 ナイアシンが知覚過敏症に効果があるメカニズムをご教授下さい
A-13 ナイアシンは糖新生の重要な経路であるコリ回路の活性化に重要です。糖新生が低下して夜間の低血糖を引き起こすと、ストレスを解消する手段としてブラキシズムが誘発されやすくなると考えます、ナイアシン投与によりブラキシズムが緩和すれば知覚過敏症に効果があると思われます。(森永)
Q-14 麻酔が効きづらい患者さんは栄養的に何かありますか?
A-14 これも以前からよくご質問に出ることですが、明確な因果関係を示す根拠は見つけられていません。局所の炎症の有無、自律神経の状態などは影響するものと考えていますので栄養的なアプローチをするとすればそのあたりだと思います。
Q-15 唾液検査で唾液緩衝能の不良が分かった患者さんへ栄養療法的に改善アプローチをすることは可能ですか?
A-15 唾液緩衝能に重要な重炭酸塩の機能に関与する炭酸脱水素酵素での亜鉛の重要性はご存じの方も多いと思います。また唾液分泌が低下すると緩衝能も低下することが知られており、鶴見大学の研究でシェーグレン症候群と酸化ストレスとの関係が指摘されていることからも、抗酸化アプローチも重要と考えます。
Q-16 医療用サプリメントの購入が難しい場合、手軽に手に入る市販のサプリメントをご案内
してもよろしいでしょうか?
A-16 サプリメントは、それを摂取する目的によって選択していく必要があります。オーソモレキュラーの最も大事な部分に関わるところです。栄養欠損による不調を改善するための「至適量」を満たすためには市販のサプリでは難しいことも多く、効果が出ないことでサプリに対する信頼感を失いかねません。
この問題に関しては昨年の「入門編」でも詳しく触れていますし、拙著にも一部記載がありますのでご参照ください。(森永)
   
  《川井勇一先生へ質問》
Q-17 口腔内を診ると仰っていましたが、口腔内のどの辺を診ていらっしゃるのでしょうか?
A.口内炎の有無と、金属の詰め物の有無、それから舌の状態、口蓋骨隆起の有無などです。
Q-18 胃・十二指腸部分切除の患者様へのアドバイスとして、
スライドNo72・73・100記載の栄養素や、プロバイオティクス、プレバイオティクス服用、グルタミン摂取、ピロリ菌有無の確認などで良いでしょうか?
またミネラル等は、胃酸が少ない分、キレート化されたものを摂取すると吸収率は良くなるのでしょうか?
A.はい。胃切後ではビタミンB12欠乏に特に注意が必要です。
Q-19 ピロリ菌除菌前に服用を勧めているプロバイオティクスとプレバイオティクスの商品名を
教えてください。
A.バイオラクト、グルタミンまたはグルタジェニックス、ウルトラフローラIB
Q-20 【リーキーガット症候群の原因2】のスライドにある「電子レンジで温められた食品」は
加工品の害という意味でしょうか?それとも電子レンジによる作用などあるのでしょうか?
A.電子レンジによる栄養素の分子構造破壊では、消化が十分にできない分子が産生されていることが指摘されています。
   
  《森永宏喜先生へ質問》
Q-21 症例の中で『P治療中にグルタミンとラクトフェリンを服用し、その効果を患者さんが
体感した』
と言っておられましたが、具体的にどのような改善を体感されたのでしょうか?
また、グルタミンとラクトフェリンの使用期間・用量をお教え下さい。
更に、グルタミンの使用目的をお教え下さい。
A.体感としては、胃部の不快感が減少したとのことでした。使用期間・用量は、グルタミン 6000mg/day 食後 30日 、ラクトフェリン600mg/day 食後また食間 30日 です。
グルタミンの効能についてはA-7 をご覧下さい。
Q-22 一般臨床への応用で、抗生剤の代わりにサプリメントを用いる時、術前・術後どのくらいの
期間、どのくらいの量で処方されているのか?その量の判断基準を知りたい(特に妊婦など)
A.ビタミンCに関しては、以下の文献を参考にしています。
Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 93, pp. 3704-3709, April 1996 Medical Sciences
これによれば、血清のVC濃度がプラトー(頭打ち)に達するのが400~500mg/日、摂取期間が22~23日です。これより多くの量や期間を摂っても血清濃度は大きくは上がりません。ですので通院間隔などを考慮して600mg/日を1週間程度(おもに術後)を処方単位の目安としています。
ですがこれは健常人のデータで炎症を伴っていませんし、患者さんによって個人差が大きく、便宜的なものです。臨床的な目安としては、経口の場合、その人の至適量に達すると便が緩くなるのでそこで止めるのが良いと言われています。徐放性剤などではまた違う状況となると思います。
妊婦に関しては、このような状況で使うサプリについては通常とまったく同じです。むしろ需要量の多い栄養素は多めでもいいと思います。VCの他にはオリーブ葉、ヘム鉄、VB群、Co-Q10などを用いることが多いです。
   
  《伊藤夕里亜先生へ質問》
Q-23 【症例:日経太郎さん】の問診で「悪夢はみませんか」 と記載されていましたが
どのような数値から読み取られたのでしょうか。
また、その場合、サプリメントは何をお勧めされますか?
A.ASTとALTは少し高めに出ているなという読み取りをしましたので、ビタミンB群不足が隠れていると思いました。おすすめのサプリメントはビタミンBコンプレックスタイプのサプリメントです。
Q-24 【入浴時間】の問診において〈岩盤浴やシャワーなどで鉄欠乏〉という話がありましたが、
その理由をお教え下さい。
A.シャワーではなく、長い時間の半身浴や岩盤浴、ですね。汗に鉄(その他のミネラルも)が排泄されてしまうためです。実際にカウンセリングをしていてもそのような経験が多いです。
Q-25 【データからの考察時】に分からなかった事
・カフェインが影響する機序を具体的に示してほしい
・亜鉛不足が過食。拒食に関係する理由は何ですか?
A.カフェインは交感神経を優位にしてしまうため、血糖値が乱れやすく次の依存物質に手が出やすいです。お酒や糖類など。亜鉛についてはインスリン分泌に関与するミネラルであることと、摂食についての論文やラットの実験などからです。亜鉛不足はインスリン抵抗性も作りやすく食べても満足感が得られない方が多いです。