なぜこのセミナーを企画したのか

先週より主催するOMDセミナー、
「栄養療法が歯科臨床を変える」
の募集を開始致しました。おかげさまで順調な出足でお申し込みを頂いています。
なぜこのセミナーを企画したのか。その理由をもう少し詳しくお話したいと思います。長文で申し訳ありません。少し歯科の専門の話が入りますが、一般の方にもお読みいただけるよう書いていますので、ご興味のある方はお読みください。
 
これまで各地での講演や学術誌への投稿などで「分子レベルでの評価に基づく食事指導・生活指導を歯科臨床に取り入れて欲しい」ということを繰り返しアピールしてきました。なぜ虫歯の治療や、入れ歯やインプラントを入れたり、歯周病を良くしたりする治療でなく「食事・栄養」なのか、ということです。
 
歯科業界以外の方の中には
「大学で勉強してきているのだから、歯科医師になればひと通りの治療は出来るのだろう」
とお考えの方もいるかも知れません。
ですが実態は全く異なり、大学を卒業して国家試験に通れば歯科医師にはなれますが、臨床医としては全く使い物になりません。
学生が受ける教育は広く深い歯科医学のほんの基礎部分ですし、何よりも臨床経験が圧倒的に不足しています。卒後の研修をどれだけ積み重ねたかが、そのドクターの力量を決めるといってもいいでしょう。
 
私も歯科医師となってもうすぐ30年になります。開業医となって25年近いです。卒直後は大学病院で研修し、そして開業医となってからは日々の診療のかたわら様々な研修会、セミナーに参加してきました。今でもそれは続いています。そこで習得した知識や技術は私の臨床をアップデートするのに不可欠なものでした。医学は日進月歩、基本は学生時代に教えられますが、現在行っている治療の多くの部分は卒後の研修で身につけたものなのです。
 
でも経験豊富な先生方は実感されていると思いますが、そんな研修と同じくらい、あるいはもっと勉強になることがあります。それは「実際に治療させてもらった患者さんの経過を追っていくこと」です。
当院は地域性もあり、大部分の患者さんが長い期間通院してくださっています。初診が平成ひとケタのカルテは珍しくありません。治療後1~2年では分からなかったことが、5年、10年と経過するにしたがい色々と見えてくるようになります。
 
治療が終了し定期検診に移行した時点では「結構いけるだろう」と思った症例が、10年後にはなぜか非常に難しい状態になる。ご本人も定期検診やお手入れにそれなりに時間と労力を使ってきた。医師、患者双方とも肩を落とさざるを得ない、という状況も残念ながら経験するようになります。
 
その一方で、同じようなケースが20年近く全く問題なく経過している、ということも目の当たりにするわけです。
「先生に治療してもらって、ホントに良かった」
と感謝していただいて嬉しい半面、何かスッキリしないところが残るのも事実でした。
 
「それを分けたものは、一体何だろう?」
と考えざるを得ない状況です。いろいろな原因が思い当たりました。もちろん「治療方法に、別の選択肢もあったかも知れない」と思う場合もあります。でも強く感じたのは
「ああ、自分は口の周囲しか見ていなかったな」
ということでした。私は卒後、大学病院の口腔外科で研修したこともあり「一般的な歯科よりは全身のこと考えている」と思っていました。それでも患者さんが診療室を出たあとの世界、特に「生活習慣・食習慣」への配慮が不足していたのです。
 
従来の歯科臨床では「砂糖の摂取を減らす」ことには注力しても、それ以上の栄養面・生活面へのアプローチはとても少ないのが現状。
「ではどうしたらいいのか」
と考えたとき、自分の栄養の知識が非常に乏しいのに気づいたのですが、どこから学んだらよいのか悩ましい状況でした。またその当時、サプリメントを医療現場に導入することが始まっていましたが、試行錯誤してみたものの一体どれが良いのか判断基準がなく「前に進めない」と感じていたのです。
 
そのタイミングで出会ったのがオーソモレキュラー医学でした。生体の恒常性と栄養素の関係を分子レベルで臨床に落とし込んでいるのにはまさに驚愕でしたし、それが検査値に反映されて病態の把握、効果判定が可能というのは非常に心強いものでした。
 
自分自身や家族、そしてスタッフでの効果を確認しつつ、患者さんにも栄養指導・生活指導、そしてサプリメント処方を行うようになりました。そこで改めて実感したのは
「健康的な社会生活、充実した人生にいかに深く歯科が関わっているか、そこで栄養が果たす役割がいかに大きいか」
ということです。「そこには歯科の大きな可能性がある」と確信できました。でもそこに気づいていた歯科関係者は本当にひと握りでしたから「多くの人に気づいてもらいたい、それには情報発信が不可欠」と考えて今日に至っている訳です。
 
今回のセミナーは、「これから自分の臨床に栄養療法を取り入れていきたい」という方を主な対象としています。そこにはいくつかのハードルが存在するのも事実です。ですが私たちの話をきいて頂くことでそれを出来るだけ低くし、多くの方にそれを飛び越えて欲しいと願っています。

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